「 、、ほんと、ふざけんなよって感じですわ。チッ、なんでこんな作業を、チッ、
作家自身がせないかんのですか、チッ 」
「 Mっちゃん、そう文句ばっかり言わんと、ちゃんと、手動かしや 」
「 チッ、納得いかねぇなぁ本と。こんな作業、とにかく、
作家自身がやる作業じゃねぇだろうよ、Oさん、チッ 」
「 、、じゃあMっちゃん、聞くけど、他に誰がこんな作業、進んで手伝ってくれるよ? 」
ハッ、とした表情を浮かべ、作業中の手元からOの方に、視線を移すM。
Oは固い表情を浮かべていた。
その、Oの一言で、完全に目が覚めたM。
「 Oさん、ボクらが自分らでやらんと、こんな作業だれもやってくれませんわ、、、」
目を閉じ、頷くO。
2人は再び、無言で自分達の、作業に戻った。
ここは、地下鉄西長堀駅と直結している、地下商業施設クリスタ長堀の
場末にあるロッテリア。
丁度おやつ時ということもあって、店内には、買い物途中、休憩がてら、ジャンクフードで
小腹の隙を埋めようとしている、チャラい若者たちで溢れかえっていた。
その店内の隅のほうで、大の男2人が、せっせと内職をしていた。
「 あと何冊っすか? 」
「 あと五冊やわ 」
先日、無事に完成した、Mの単行本「かわらばんくん」。
今日は大阪北堀江にある、貸本喫茶ちょうちょぼっこさん、そして、
神戸元町のトンカ書店さんに、その完成した単行本を納品に行こうと計画していたMとO。
トンカ書店さんでは同日の晩に、K山さん主催のイベント「パブリッシュゴッコ」が開催される
予定で、2人はそちらにもお邪魔しようと企んでいた。
今回の単行本には『帯』をつけてみたらどうかという、Oの思いつきの提案にMは賛成し、
Oが自宅でつくってきた帯をつける作業を、ロッテリアで今しているわけだが。
「 あ〜もう、違うって、最初からそんなにきつく折り目つけるんじゃなくて、
こう、最初はあたりをつける感じて優しく折ってから、冊子の角に合わせた所で、
こう、もう1回きちんと、、」
「 何かOさん慣れてますね、私が1つ帯つける間に、3つくらいつけてるやんか 」
「 うん、こういうの慣れやからね。僕は何回か家でやっとるから、もう慣れとるんや 」
「 ハイハイ、こういう感じで、最初は柔らかめに折り目つけとくと、後から調整きくん
ですね、『きクぜ!』て感じですね 」
「 『きクぜ!』って、加納典明ちゃうんやから、、、 」
「 まぁ、でもね、Oさん、さっきから偉そうに、私に指示出してますけど、
切ったり折ったりする作業なら、私の方がフリーペーパー版かわらばんくんを作っていた
っていう実績があるんですから、あんまり上からモノ言わない方がいいですよ 」
「 誰も偉そうになんか言うてないやん、、おっ、これで最後やな、よっしゃ 」
今日納品する予定の単行本に、テキパキと最後の帯をつけるO。もう手馴れたもので、
帯をつける手つきには帯職人の風格さえ、漂わせていた。
「 うん、とりあえずOKっすね、何か作業をやり終えたあとの爽快感ですね、
超気持ちいい〜ってかんじですね 」
「 ほんまやね、例えばやで、例えば、何万冊も単行本が売れてる、人気漫画家さんには
この感覚味わえないやろうね 」
「 まぁ、『別に味わいたくね〜よ』って話かもしれませんしね、ハハハハ、笑っちゃう 」
「 ハハハハ 」
「 そういや、
N町さんの自分毒最新号の中で、
Tテイシさんのインタビュー記事あったやんか、
その中でこう、複数の知らない人同士でチラシとかフリーペーパーを折ったりする
機会があって、その作業中に、新しいコミュ二ケーションが発生して、
それが楽しかったていう経験をTテイシさんがしたことがあるっていう、
文章載ってましたね 」
「 うん、何かタイムリーやな、いまの帯折る作業も感覚として近いかもしれんね、、、」
自分たちが作った本に、これまた自分たちでつくった帯をつけるという、自作自演極まりない
内容のひと仕事を終えて、適度な疲労感を抱えたMとO。
「 それじゃ、そろそろ行きますか、、、 」
「 そうやね、行こうか、、、 」
本に帯をつける作業で、既に疲れてしまった2人。
本日予定している本屋さん納品や、イベントに参加するのはこれからで、
まだ何ひとつとして自分たちは達成できていない。
果たして、今日一日を乗り切れるのかと不安になった、午後4時44分、
重い足を引きずりながら、MとOはロッテリアを後にした。
つづく