温かさ

 「 あ、あの〜、、すいません、私、こちらでミニコミを取り扱って頂いている
   者なのですが、、、 」

 「 あっ、ハイ〜、ようこそおいでくださいました、
   え〜と、、、 」

 「 あっ、、、漫画雑誌山坂という冊子を取り扱っていただいてるんですが、、、 」

 「 あっ、ハイハイ〜どうもどうも〜 」

  約半年振りに、ちょうちょぼっこさんの店内に足を踏み入れたM。
  カウンターで、お店番している女性が、ニコニコとした、やさしい表情で対応してくれた
  おかげで、約半年振りに、ちょうちょぼっこさんに来たということで、緊張して
  シドロモドロな状態だったMは、安心した。

  カウンターの女性が、以前お会いしたことのある、Tさんでも、Fさんでも、Sさんでも
  ないという事は、この人はきっと、GさんだなとMは思った。

  チラリと後方を振り返ると、Oはまだ入店していなかった。
  ちょうちょぼっこさんの入り口ドアの手前にはフリーペーパーコーナーが
  設けられているのだが、Oは、さぁ、入店しようという段になって、突然立ち止まり、
  「 ほうほう 」等と言いながら、整然と並べられているフリーペーパーを物色し
  始めたのだ。

  この行動は、人見知りなOが、またM自身もよくやる手口である。
  行きなれていない場所や、初めて行く場所に、MとOの2人で足を踏み入れようと
  する時、確信犯的に、その直前で急に歩を休めたり、牛歩作戦をとったりする。

  今日はOがその先手を打ってきたので、仕方なくMが先にちょうちょぼっこさんへの
  扉を開いた。
 
 「 えっと、それで、今日はどうされましたか? 」

  カウンターの前に仁王立ちして、なかなか用件を述べようとしないノッポに対して、
  Gさんは、やさしく、そうたずねてくれた。

 「 あっ、それで、今日は、あのですね、ちょと事前の連絡はしていなくて、
   申し訳ないのですが、山坂書房から新刊が出ましたので納品させていただこう
   かしらなんて、、、」

 「 あっ、ハイハイ〜、納品ですね〜,お待ちしておりましたよ〜
   山坂3号も完成しているんですよね〜 」

  それがGさんのサービスだとしても、Mは、Gさんのやさしい受け答えに感動した。
  
  しばらくしてOが後方からヌッと現れ、納品書を淡々と書いて、山坂3号と
  新刊かわらばんくんの、ちょうちょぼっこさんへの納品は無事完了。

 

 「 いや、ほんといつも僕らの冊子、納品させていただき、ありがとうございます。
   貴重な本棚のスペースお借りしちゃって、、、恐縮です 」

 「 いえいえ、こちらもあんまり、お店開けられていないんで、
   なかなか貢献できるかどうかわかりませんが、
   またよろしくお願いしますね〜 」

 「 いえ、本とありがたいです。
   あっ、そういや僕(M)はこれで、Gさんとお会いできたわけですから、
   ちょうちょぼっこさんのメンバーと全員にお会いできたことになるんですね、
   光栄です 」

 「 あっ、実は私ら4人で全員じゃなくて、もう1人いるんですけどね〜 」

 「 えっ!!もう1人いるんですか!?それは、初めて知りましたわ!! 」

 「 、、、嘘ですけどね、ハハハ〜 」

 「 何だ〜嘘ですか〜、びっくりしたな〜、もう、
   さすがジョークも冴えてますね、Gさんハハハっ 」

  ※ 後から考えると、ちょうちょぼっこさんのメンバーが4人でも5人でも、
    MとOにとっては、そんなにびっくりするようなことでは無いような
    気がしますが、その時は何故だか、2人揃ってびっくりしてしまいました。
    


 「 それでは、また来ます。どうもありがとうございました〜 」

 「 ハイ〜、ではでは〜 」


  
  ちょうちょぼっこさんを後にして、2人は一路、なんば駅へ向かう。

 「 いや〜Oさん、しかし、ありがたいですね、ちょうちょぼっこさんには、
   毎回気さくに対応して頂いて、、、 」

 「 ほんとやね、いつ行っても何か温かい雰囲気やし、貴重な場所やね、、、 」

  そう言いながら、Oは被っているハンチング帽をモゾモゾと動かしていた。

 「 、、、あれっ?そういやOさん、今日ハンチング帽被ってましたっけ? 」

 「 いや、来る時は被ってなかったんやけどね、寒かったから買うたんよ 」

 「 買うたっていつ買うたんですか? 」

 「 うん、Mっちゃんと待ち合わせる前にね、ちょっと時間あったけんねぇ 」

 「 あ〜、そういや何か黒い紙袋下げてましたね、あれっすか? 」

 「 そうそう、何か帽子の中に入れるクシュクシュのやつも、おまけしてくれたわ 」

 「 よかったじゃないですか、でも私が、気づかんうちに被ったんですね 
   全然気づきませんでしたわ 」

 「 あっ、そう?まぁ、でも僕なんか坊主頭やけんね、
   やっぱり帽子でも被っとかんと冬は寒くてねぇ、ハンチング被ったら全然違うわ、
   温かいわ。フフフ、、、 」

  そう言いながらOは凄く満足気な表情を浮かべていた。
  
  
  2人は、なんば駅から阪神電車へ乗り込み、三宮へ向かった。

  
  つづく

   
  
  
  

  

 「 、、ほんと、ふざけんなよって感じですわ。チッ、なんでこんな作業を、チッ、
   作家自身がせないかんのですか、チッ 」

 「 Mっちゃん、そう文句ばっかり言わんと、ちゃんと、手動かしや 」

 「 チッ、納得いかねぇなぁ本と。こんな作業、とにかく、
   作家自身がやる作業じゃねぇだろうよ、Oさん、チッ 」

 「 、、じゃあMっちゃん、聞くけど、他に誰がこんな作業、進んで手伝ってくれるよ? 」

  ハッ、とした表情を浮かべ、作業中の手元からOの方に、視線を移すM。
  Oは固い表情を浮かべていた。
  その、Oの一言で、完全に目が覚めたM。

 「 Oさん、ボクらが自分らでやらんと、こんな作業だれもやってくれませんわ、、、」

  目を閉じ、頷くO。
  2人は再び、無言で自分達の、作業に戻った。


 ここは、地下鉄西長堀駅と直結している、地下商業施設クリスタ長堀の
 場末にあるロッテリア。
 丁度おやつ時ということもあって、店内には、買い物途中、休憩がてら、ジャンクフードで
 小腹の隙を埋めようとしている、チャラい若者たちで溢れかえっていた。
 その店内の隅のほうで、大の男2人が、せっせと内職をしていた。

 「 あと何冊っすか? 」

 「 あと五冊やわ 」

 先日、無事に完成した、Mの単行本「かわらばんくん」。
 
 今日は大阪北堀江にある、貸本喫茶ちょうちょぼっこさん、そして、
 神戸元町のトンカ書店さんに、その完成した単行本を納品に行こうと計画していたMとO。
 トンカ書店さんでは同日の晩に、K山さん主催のイベント「パブリッシュゴッコ」が開催される
 予定で、2人はそちらにもお邪魔しようと企んでいた。

 今回の単行本には『帯』をつけてみたらどうかという、Oの思いつきの提案にMは賛成し、
 Oが自宅でつくってきた帯をつける作業を、ロッテリアで今しているわけだが。

 「 あ〜もう、違うって、最初からそんなにきつく折り目つけるんじゃなくて、
   こう、最初はあたりをつける感じて優しく折ってから、冊子の角に合わせた所で、
   こう、もう1回きちんと、、」

 「 何かOさん慣れてますね、私が1つ帯つける間に、3つくらいつけてるやんか 」

 「 うん、こういうの慣れやからね。僕は何回か家でやっとるから、もう慣れとるんや 」

 「 ハイハイ、こういう感じで、最初は柔らかめに折り目つけとくと、後から調整きくん
   ですね、『きクぜ!』て感じですね 」

 「 『きクぜ!』って、加納典明ちゃうんやから、、、 」

 「 まぁ、でもね、Oさん、さっきから偉そうに、私に指示出してますけど、
   切ったり折ったりする作業なら、私の方がフリーペーパー版かわらばんくんを作っていた
   っていう実績があるんですから、あんまり上からモノ言わない方がいいですよ 」

 「 誰も偉そうになんか言うてないやん、、おっ、これで最後やな、よっしゃ 」

 今日納品する予定の単行本に、テキパキと最後の帯をつけるO。もう手馴れたもので、
 帯をつける手つきには帯職人の風格さえ、漂わせていた。

 「 うん、とりあえずOKっすね、何か作業をやり終えたあとの爽快感ですね、
   超気持ちいい〜ってかんじですね 」

 「 ほんまやね、例えばやで、例えば、何万冊も単行本が売れてる、人気漫画家さんには
   この感覚味わえないやろうね 」

 「 まぁ、『別に味わいたくね〜よ』って話かもしれませんしね、ハハハハ、笑っちゃう 」

 「 ハハハハ 」

 「 そういや、N町さんの自分毒最新号の中で、
   Tテイシさんのインタビュー記事あったやんか、
   その中でこう、複数の知らない人同士でチラシとかフリーペーパーを折ったりする
   機会があって、その作業中に、新しいコミュ二ケーションが発生して、
   それが楽しかったていう経験をTテイシさんがしたことがあるっていう、
   文章載ってましたね 」

 「 うん、何かタイムリーやな、いまの帯折る作業も感覚として近いかもしれんね、、、」


  自分たちが作った本に、これまた自分たちでつくった帯をつけるという、自作自演極まりない
  内容のひと仕事を終えて、適度な疲労感を抱えたMとO。 
 
 「 それじゃ、そろそろ行きますか、、、 」

 「 そうやね、行こうか、、、 」

 本に帯をつける作業で、既に疲れてしまった2人。
 本日予定している本屋さん納品や、イベントに参加するのはこれからで、
 まだ何ひとつとして自分たちは達成できていない。
  
 果たして、今日一日を乗り切れるのかと不安になった、午後4時44分、
 重い足を引きずりながら、MとOはロッテリアを後にした。

 
 つづく


 

 

アンテナ

昨日のこと。

「いやー、Oさん。寒なりましたね。
 ところで来る途中とかに何かありました?

 今日アレでしょ。大阪女子マラソン。」

「あー、いや特に何にもなかったけどなー。

 別件で事故があったみたいで、信長書店の前に
 パトカーいっぱい停まってたぐらいで。」

「へー、案外関係あるんかもしれませんけどね。」

喫茶マロンでの定例会議、寒くなってくると
ホットドリンクがとてもありがたいことに気づく。

「でまあ、『かわらばんくん』なんですがね、Oさん。
 通販開始から1週間たったわけですが、
 現在のところ問い合わせ件数×件ですわ。」

「まあ、数字云々は置いておいて、ありがたいと思わんとね。
 こんな得体のしれないグループが出す冊子を
 アンテナ張ってチェックしてくれてるんやから。」

「確かにそうですね。そう思いますわ。

 で、あのほら、N町さんにね、協力してもらったお礼に
 一部贈ったじゃないですか。

 そしたら丁寧に最新の『自分毒 肆号』送ってきてくれたんですよ。
 これOさんの分です。」

「あ、今回Tテイシさんのインタビュー号なんや。
 それにしても、いつも丁寧に作ってるよね。
 ホチキス止めして三つ折りやもんねー。」

「なんか『かわらばんくん』のこともブログ
 取り上げてくれたりしてますし、いい人ですわ。」

自称ミニコミパトロールの山坂の二人は、色んなイベントなどで
知り合った人のサイトやブログはこまめにチェックしている。

言うなれば、単なる根暗ですわ。

その後も、Mの実家に『かわらばんくん』を送った話や、
近々あるイベントについての話をした。



2月6日(土) パブリッシュゴッコ9(inトンカ書店)にて
『かわらばんくん』販売します。
特典付きバージョンを用意していきますので、
この機会にぜひお求めください。

『かわらばんくん』 取扱い書店様

タコシェ(東京中野)
ガケ書房(京都)
トンカ書店(神戸)PGの際に納品予定

どうぞよろしくお願いします。

かわらばんくん

DSCF8882.jpg

■ かわらばんくん(初回限定オリジナルふきん同梱エディション)

 特典付き先行販売 A5版 56ページ 定価300円


お待たせしておりました『かわらばんくん』単行本。

予定よりも早く製本が上がりましたので
ネット通販にて先行販売したいと思います。

さらに、今だけ。
通販購入者のみ先着30名様に、上の写真に見えます
『かわらばんくんオリジナルふきん』を
通販特典として、お付けいたします。

詳しくは、山坂書房ホームページ内にあります
通信販売のページをご確認の上、下記アドレスまで
ご連絡下さいませ。

yamasaka-yosansen@mail.goo.ne.jp


各取扱い書店に並ぶのは
もう少し先になると思います。

アイデアマン

「これいいじゃないですか。これにしましょ。」

「そうやね。S氏が使ってる場面も想像できるし。」

「いやー、Oさん。自画自賛じゃないですけどね
 これは100点のプレゼントですよ。」

カウンターでクリスマスっぽい包装をしてもらって
ショッピングモールを後にした。

しばらくの間、下のスターバックスで待っていると、
ガラスの向こうでS氏が手を振っているのが見えた。

S氏は踝ぐらいまで丈のあるロングコートを身に纏い
簡単に挨拶を済ませると、

「じゃあ、行きましょか。」

と、さっさと目的地に向かって歩き始めた。


中華料理「大東」


前回のこの3人の集いでも利用した中華料理屋。
テーブルに座って新年のあいさつをし、
瓶ビールで乾杯をした。

S氏と会うのは昨年9月、東京での個展を見に行って以来だった。

個展後の話などをかるく話したあと、
用意しておいたプレゼントをS氏に手渡した。

「おー、ありがとう。開けていい?」

包装をとくと、ステンレス製のマグカップが顔を出した。

「いや、S氏。二人で相談して色々と考えたんやけどね。
 めっちゃいいスポンジとか、かっこいいサングラスとか。

 でもま、結局こうS氏がアトリエとかで使ってる姿を
 一番想像できたこれに決めたんよ。」

「ありがとう、なんかプレゼントの原点やね。

 いや、やっぱり最近お祝いをもらうことが多かったんやけど、
 僕自身へのプレゼントってなかったから、嬉しいわ。

 でまあ余談なんやけど、明日マイカップを持って集まる
 集会みたいなのがあって、マイカップ持ってないなあって
 思ってたところやったから、ジャストタイミングで。

 さっそく明日使わせてもらいます。」

プレゼントも喜んでもらえてホッとした二人は、
S氏が有名人でいったら誰に似ているかなど
どうでもいいような内容の話をしながら
中華料理に舌鼓を打った。

その後、隠れ家的なお店に河岸を変え、
甘いものをつつきながら打ち合わせを交わした。

先ほどの中華料理屋でグラス1杯のビールを口にした
Mは、とても気分よさげに話していた。

「いやー、せっかくね、こう3人揃ったわけですから
 私に提案があるんですけれどもね。

 手始めにフリーペーパーを作るっていうのはどうですかね。
 私の責任編集で、A4一枚ぐらいのね。
 でまあ、その編集者というか司令塔として…
 うーん、どう言うたらいいんすかね…」

「アイデアマン?」

「そう!それ!まあ、アイデアマンの私として考えたのは
 Oさんには小説を書いてもらいます。

 もうタイトルは決まってて、『人形の町』っていう小説なんすよ。」

「へー。もう決まってるんや。」

「そうですよ。何言いよんですか。
 でねあの、S氏にもコラムを書いてもらおうと思ってて。

 毎月ですね、こう美術作品を取り上げて、S氏の視点で
 作品について語ってもらうみたいな企画なんですけど、
 そのコラムのタイトルも、もう考えてて、
 『俺に言わせりゃ現代美術!』なんですけど。」

「ギャハハハ!(O)」

「ポカーン(S氏)」

「どうっすかS氏。」

「ようわからんわ。ていうか、やらへんけどね。」

「いや、S氏。まあMっちゃんの冗談なんやろうけどもね。

 あながちね、こうやって口にしたことってバカにできなくて
 5年後、10年後とかにポッと現実になったりするかもしれんよ。」

「そうなんかなー。
 まあ、フリーペーパーはないとしても…」

居心地のいい座敷スペースで、三人は時の経つのも忘れ
久しぶりに話し込んだ。

また近々会う事になりそうだ。


 −了−

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プロフィール

山坂ヨサンセン

Author:山坂ヨサンセン
自費出版漫画家

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■単行本「かわらばんくん」       発売中(通販初回特典付)                ■次回 漫画雑誌「山坂」第四号  今春発行に向け鋭意作成中                       

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